ロイヤルでパレスなウサギ小屋

ウチのベランダで煙草を吸いながら、ボーッと近所の景色を眺めていると、近くのアパートのてっぺんに大きく「コーポ山田」と書いてあるのが見えた。

考えてみると、日本のアパート・マンションのネーミングは本当にバラエティーに富んでいる。私が子供の頃は、普通に「○○荘」とか「○○アパート(マンション)」という感じの名前が多かったように記憶している。それがいつの間にか「○○パレス」や「メゾン○○」なんていう名前に進化したかと思っていたら、今では外国語のボキャブラリーに乏しい私には全く意味が分からない名前だらけになってしまった。

アパートに入居したり、マンションを購入したりする時には、物件の良さ、立地条件、価格(家賃)などを考慮するのが普通で、建物の名前まで考慮することはないだろうけれど(仮に考慮したとしても検討事項リストのかなり下位にくるのではないかと思うが)、国際化とやらが相変わらず進行中の今日、自分の住む建物の名前のせいでバツの悪い思いをした人はいないだろうか?

まず、昔からある「○○マンション」という名前を考えてみよう。「マンション」とは英語で「邸宅」とか「屋敷」という意味で、英語のネイティブスピーカーが"mansion"と聞けば、恐らくこういう建物を想像するだろう。

「○○マンション」と"mansion"にはこれだけの差があるにもかかわらず、だ、「ロイヤルパレスマンション横浜」なんていう名前になると、

  • ロイヤル→ royal=王家の、王族の、王立の
  • パレス→ palace=宮殿、宮廷、公邸

がマンションにくっついて、「王家宮殿邸宅・横浜」くらいの意味になり、リビングでは、お抱えの室内管弦楽団が演奏していてもおかしくないような状態だ。

さらにこれが「ロイヤルパレスマンション横浜・ローレルヒルズ」なんて名前になったら、「王家宮殿邸宅・横浜・月桂樹丘」となり、それこそ
「脳みっそ、ぼーん」
である。

さて、あなたにはビジネス上、あるいは個人的なお付き合いがある外国人がいらっしゃるだろうか?いつもはEメールなどを通してコミュニケーションを取っていても、たまに「今度クリスマスカードを送りたいから、住所を教えて」なんて話になることがある。すると困るのである。一瞬切なくなるのである。だって「ロイヤルパレスマンション横浜」なんだもの。

外人:「ハニー、彼が住所を教えてくれたよ。えーっと、神奈川県横浜市XXXロイヤルパレスマンション横浜だそうだ。ロイヤルパレスマンション?王家宮殿邸宅?ぷぷ。ハニー、これを見てくれよ。王家宮殿邸宅だって、どわははは。」

商品などのネーミングは国民性や言語感覚を反映しており、ターゲットとする消費者にアピールできるのならば、どんな商品名でも良いのである。国内消費者向けの商品ならば、そのターゲットに合ったネーミングをすれば良いのである。だから「日産サニー(日がよく照っている)」がアメリカでは「なんじゃこりゃ」となる一方で、"Lincoln Mark VIII(リンカーン八号)"が日本でどん臭い名前だと見られたとしても、これはこれでOKなのだ。

だが、それでも私は困るのである。「ロイヤルパレスマンション横浜」は。